東京電力福島第1原発(福島県大熊町、双葉町)の事故から3月11日で8年になります。東電は1月30日、事故収束作業が続く同原発構内を合同取材団に公開しました。本紙も参加しました。(三木利博)
構内では今も約4000人以上が作業に当たっています。汚染水をためるタンクを、ボルトで鋼材を締め付ける型から溶接型に取り換える作業などに当たっていました。がれきの撤去などで、全面マスクなどの着用をせず、防じんマスクなどの装備で作業できる面積が敷地の96%になったといいます。
20年以後未計画
構内で目につくのが、トリチウム(3重水素)などの放射性物質を含む汚染水をためる巨大なタンク群。バスから降車した場所のタンクの高さは10メートルありました。タンクはすでに約950基を数え、汚染水の貯蔵量は約110万トンに上ります。現在も毎日、約100~150トン増え続けています。タンクの余裕もわずか。タンク増設は2020年末まで137万トンにする計画ですが、その後のことは決まっていません。
昨年、処理設備で汚染水を処理したはずなのに、取り除けないトリチウムのほかに、別の放射性物質が国の放出基準(告示濃度限度)を超えていることがわかりました。その割合は処理したうちの8割に上ります。東電は、基準超えの水をさらに再処理する計画ですが、時期などの方針はないといいます。
水素爆発の爪痕
3月に解体を始めるという、1、2号機原子炉建屋のそばの主排気筒前も案内されました。高さ120メートルで、中間付近の支柱に破断などが10カ所見つかり倒壊の恐れが心配され、東電は3月にも上半分を解体する作業に入るといいます。現場ではクレーンなどの準備作業が行われていました。事故時に1号機の原子炉格納容器内の圧力を下げるため放射性物質を環境へ放出するのに使われ、底部には毎時1万ミリシーベルト以上の放射線源が見つかっています。解体に伴う放射性物質の飛散対策などの課題があると話していました。
2、3号機原子炉建屋の間の海抜10メートルの場所の道路で降車。「事故時は高さ5~6メートルの津波が押し寄せ、一時は海の中でした」と話します。昨年5月からより軽装備で作業できるようになった場所だといいます。建屋側面は水素爆発の爪痕が今も残っています。上部のプールに保管された使用済み核燃料を取り出す際のドーム施設があります。設備の不具合が相次ぎ、18年度の取り出し開始時期が先延ばしになり、3月を目標に取り出しを開始するとしています。
政府と東電が決めた廃炉工程は30~40年。担当者は「事故から8年。1~3号機の使用済み核燃料の取り出しなど、一つひとつを積み上げていく」と述べていました。
構内にいた時間は1時間半弱。胸の線量計の値は50マイクロシーベルトでした。
(「しんぶん赤旗」20189年1月31日より転載)