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日立、英国で2基建設計画 暗礁に 原発輸出総崩れ・・ゼロめざす国民世論が背景/ウェールズ住民「計画から撤退を」

 英国で原発事業を目指してきた日立製作所は計画を凍結する可能性が濃くなりました。同計画は、原発輸出の可能性が残る唯一の計画でした。東京電力福島第1原発事故後、「原発ゼロ」「原発輸出なんてとんでもない」の世論と運動が強まる中、原発輸出戦略は総崩れの状態です。

行き詰まり

 安倍晋三首相は、福島県民約16万人が避難生活を強いられている状況をしり目に、2013年に「インフラシステム輸出戦略」を決定。原発輸出を10年間で約2兆円へ7倍化すると掲げ、それまでの部品や設備の輸出から、原発プラントそのものの輸出へと内容を大きく変えました。安倍首相みずから、原子力産業界と一体となってトップセールスを展開してきましたが、経済産業省によると、原子力の海外受注実績はゼロ(2016年)です。

 東芝は米国の子会社、原子力大手ウェスチングハウスの経営破綻により、米国の計画から撤退しました。ベトナム、台湾、リトアニアへは凍結・中止。インドとは原子力協定を結んで秘密交渉を重ねていますが難航のもようです。最近になり三菱重工業のトルコでの計画も「断念へ」と報じられました。

 3兆円に膨らんだ日立の英国での原発事業では、経団連の中西宏明経団連会長(日立製作所会長)が「もう限界だと英国政府に伝えている」と明かしました。出資企業の確保が難航し、巨額の損失が出た場合に単独では補えないためです。中西氏は日英両政府にさらなる支援を求める意向を示しましたが、破綻を認めて断念すべきです。

 日立は英国の電力事業会社「ホライズン・ニュークリア・パワー」を12年に900億円で買収。英中西部のアングルシー島で原発2基の建設を計画し、20年代中期に商業稼働を目指していました。

 福島原発事故後の安全対策費の高騰から建設費は当初の2兆円から1・5倍に拡大しました。原発事業の失敗で経営危機に陥った東芝の二の舞いを避けるため、ホライズン社の出資比率を50%未満に下げ、子会社から外すことを画策しています。

 今年5月には中西氏が英国のメイ首相と会談して支援強化を要請。英国政府による投融資額を2兆3000億円まで積み増し、残りの7000億円を日立や日本の電力会社・金融機関が分担するとされていました。採算確保の鍵を握るのが英国の電力買い取り価格です。ところが日立が求める高価格の買い取りには、英国内で反発が強く、日立が求める水準には達していません。

ツケは国民

 安倍政権は、「国内の原子力技術と人材基盤の維持強化にとって原発輸出が重要」と説明して、再稼働と一体に原発輸出を進めてきました。政府100%出資の国際協力銀行(JBIC)による出資と、日立に巨額の損失が出た場合に備えて日本貿易保険(NEXI)が損失を穴埋めする枠組みを想定しています。

 2月6日の衆院予算委では日本共産党の笠井亮議員が「もうけは原発メーカーと原発利益共同体へ、損失のツケは国民にという原発輸出はキッパリやめよ」と追及しました。安倍首相は「現時点で何ら決定していない」と説明を拒んでいました。

 世界では原発はハイリスクとの認識が広がる一方、再生エネルギーの利用が拡大しています。原子力政策の専門家らによる「世界原子力産業現状報告」2018年版(WNISR2018)は、世界全体の原子力発電のシェアが1996年の17・5%から2017年には10・3%まで下落したと明らかにしました。さらに「再生エネルギーのコストは原子力よりはるかに低くなっている」と指摘しました。経産省の資料でも、16年の世界の電力投資は原子力が2・5兆円に対して再エネは30兆円。さらに40年には再エネへの投資は170兆円に伸びる見込みです。

 原発の新増設について5月23日の衆院経済産業委員会で笠井亮議員の質問に世耕弘成経産相は「新設・建て替えは全く考えていない」と答弁していました。ところが、政府は、19年度予算案で、新型原子炉の研究・技術開発のために6・5億円を盛り込み、原発推進に固執しています。

 日本共産党など野党4党は3月9日、「原発ゼロ基本法案」を衆議院に共同提出しました。国会史上初の原発ゼロをめざす法案提出の背景にあるのは大きな国民世論です。衆院経産委員会での審議は待ったなしです。再稼働中止、原発ゼロ・輸出もしないエネルギー政策の転換に向けた共同がますます求められています。

 (日本共産党国会議員団事務局・中平智之)

(「しんぶん赤旗」2018年12月28日より転載)


日立、英国で2基建設計画 暗礁に・・ウェールズ住民「計画から撤退を」

日立製作所本社前で原発輸出反対を訴えるPAWBのメンバー=5月29日、東京都千代田区

 「私たちの美しい島にウィルファ原発を建てないでください」。5月下旬に英国から来日した地元住民団体「PAWB」は、日立製作所本社前で声を上げました。日立による英ウェールズの原発輸出計画は、地元の人々から強い反対を受け続けています。

 PAWBは国際環境団体「FoEジャパン」とともに経済産業省や日立本社などを訪問し、原発輸出の中止を要請しました。原発建設計画が浮上した1988年に設立されたPAWBは、英アングルシー島で脱原発を求めてきました。

 「日立にとって賢明で実現可能な選択肢はウィルファ原発計画を廃棄し、廃炉以外の他の原発計画から撤退することです」とPAWBのメンバーである元獣医師のロバート・デイビーズさんは指摘します。「もはや原子力に実行可能性や持続可能性、安全性はなく、低炭素エネルギーでもありません。福島のような災害が発生する危険があります。原子炉を閉鎖しても1世紀をはるかに超える期間、放射性廃棄物が敷地に放置されることになるのです」

 FoEジャパンの深草亜悠美(ふかくさ・あゆみ)さんは「撤退判断が遅れれば日立の損失は膨らむ。日本政府を忖度(そんたく)することなく、正しい経営判断を望みたい」と語ります。

 (斎藤和紀)

(「しんぶん赤旗」2018年12月28日より転載)