九州電力が太陽光発電を行っている一部の事業者を対象に発電を一時停止させる「出力制御」を実施したことに、「再生可能エネルギー普及のブレーキになる」との懸念と批判が広がっています。出力制御は、電力需要が減って、供給が増えて需給バランスが崩れると大規模停電を起こすおそれがあり、それを回避するための措置だと九電は主張します。しかし、原発4基を動かし続ける一方で、太陽光使用を抑えるやり方は再生エネを広げることを願う国民から見ると納得できません。
好条件が生かされず
九電による太陽光発電の出力制御は13、14両日に実施されたのに続き、20、21両日にも行われました。離島以外での再生エネの大規模な出力制御は全国で初めてです。今後も電力の需要が少なくなる秋や春の土日、休日に繰り返されるおそれがあります。
日照条件に恵まれた九州では太陽光発電の導入が進み、8月末時点で約800万キロワット、設備能力では原発約8基分に匹敵する規模です。九州の日中の消費電力の大半を太陽光でまかなえる日もでています。
環境面でも経済面でも優れている太陽光などを生かし切るという点で、今回の出力制御は逆方向です。電力が余るからといって太陽光などが「調整弁」にされることは、発電事業者には打撃です。「安心して進められない」などの不満が上がっているように、再生エネ推進に水をさす事態です。
太陽光発電の広がりにともなう出力制御について、九電は4年前から想定していましたが、再生エネを可能な限り生かす努力を怠っていました。例えば、余剰電力を生かすために、本州など他の電力会社に送電する「連系線」のシステムの拡充は本格化していません。電力の大消費地、近畿地方を含む西日本規模で連携する方向などは具体化できなかったのか。出力制御の回避策を十分とっていたとはいえません。
その一方で、九電が熱心だったのは原発再稼働です。川内原発1、2号機(鹿児島県)に続き、今年3月に佐賀県の玄海原発3号機、6月に同4号機の再稼働を強行しました。電力が余ることが分かっていながら2基で200万キロワット分以上供給を増大させたことになります。原発だけで日中の電力需要の半分以上に相当します。原発再稼働を最優先させ、再生エネを押しのける九電の姿勢が問われます。
原発を優先させる国がつくった出力制御のルール自体問題です。原発は出力調整が難しいことなどを理由にしていますが、それこそ原発が「融通」のきかない電力であることを示すものです。今後、全国的に太陽光発電などが普及すれば、他の電力会社でも出力制御を行う事態に直面しかねません。原発に依存せず再生エネをフル活用できる供給の仕組みへ見直しが急がれます。
主力電源化というなら
原発再稼働が、再生エネ普及の妨げにしかならないことはいよいよ明白です。安倍晋三政権は今夏に閣議決定した「エネルギー基本計画」で、再生エネの「主力電源化」を初めて盛り込みましたが、原発推進とは全く両立しません。
日本のエネルギー政策の基本を転換して、再生エネ優先、原発ゼロへの道こそ求められます。
(「しんぶん赤旗」2018年10月22日より転載)