「温暖化は続く。いま行動しなければならない」―国連気候変動政府間パネル(IPCC)が、地球温暖化に関する最新の科学的知見をとりまとめた報告を発表した9月27日、国連の潘基文(パン・ギムン)事務総長はこう強調しました。
気温上昇2度目標
報告は、地球温暖化の進行を「疑う余地がない」と断定。人間の活動による温室効果ガスの排出がその主要な要因であることを、これまで以上に明確にしました。
気温上昇を産業革命以降2度以下に抑えること(2度目標)は国際的合意。これを超えると、干ばつや砂漠化の進行、氷河の溶解、海面上昇などにより生態系と人間の生存条件に深刻な影響を及ぼす恐れがあると指摘されています。
IPCC報告は、温暖化防止対策が先送りできないことを強く警告するものでした。
報告公表から1カ月半後、11月11日から2週間にわたり、ポーランドの首都ワルシャワで国連気候変動枠組み条約第19回締約国会議(COP19)が開かれました。
COP19は不十分
COP19は、▽温暖化防止・温室効果ガス排出削減の新たな国際的枠組みを15年までに合意(20年に発効)する段取りを確定▽2度目標達成のため当面の削減目標を底上げ▽温暖化の防止とその影響に対処するための途上国への資金援助―が主要な課題でした。
結果は、各国が15年末までに温暖化防止対策を提出することで合意し、次のステップに進むことを確認。しかし他の課題で大きな進展はなく、進行する温暖化の現状に照らして不十分な内容に終わりました。
最終文書は各国が提出する対策について、当初案にあった「誓約」の文言を「貢献」に薄め、新枠組みづくりで新たな論争の種を残したとみられます。
会議の展開は、先進国と途上国の対立と描かれますが、会議の進行に水を差したのは、安倍政権が削減目標の引き下げ(05年比3・8%減、1990年比で3・1%増)を発表したことでした。
「先進国が目標を後退させているのに、なぜ途上国が対策を強化しなければならないのか」―途上国から突きつけられた厳しい批判に、先進国側、特に日本がどう向き合うのかが問われます。(パリ=浅田信幸)