東京電力福島第1原発事故で増え続けている高濃度のトリチウム(3重水素)を含む汚染水の処分方法をめぐり、国の汚染水処理対策委員会の小委員会は30日、一般の意見を聞く公聴会を福島県富岡町で開きました。団体・個人の計14人が意見表明しました。(解説15面)
処分対象の汚染水にトリチウム以外の放射性物質も基準値を超えて残留していることをめぐり「議論の前提が崩れた」「やり直すべきだ」と厳しい批判が相次ぎました。同対策委員会が2016年に示した海洋放出案に反対する意見が多数を占めました。
海洋放出に強く反対している福島県漁連の野崎哲会長は、風評被害について「払拭には想像を絶する精神的、物理的な労苦を伴うことを経験した」と強調。「試験操業という形で地道に積み上げてきた福島県水産物の安心感をないがしろにし、魚価の暴落、漁業操業意欲の喪失を招く。福島県漁業に致命的な打撃を与える」と述べました。
福島県新地町の漁師の小野春雄さん(66)は「本格的な操業が何年も遅れ、漁労技術も途絶えてしまう」と訴えました。
原発問題住民運動全国連絡センターの伊東達也筆頭代表委員は、石油備蓄用の大型タンクによる陸上保管も検討対象にすべきだと提案。トリチウム水の扱いをめぐり「加害者である政府が原発事故の法的責任を表明してこそ、県民、国民から受け入れられる可能性が出てくる」と述べました。
公聴会は31日にも同県郡山市と東京都で開きます。国は公聴会の意見を踏まえ処分方法を検討します。
(「しんぶん赤旗」2018年8月31日より転載)