原子力規制委員会の更田豊志委員長は22日の定例会見で、東京電力福島第1原発で高濃度放射能汚染水の処理後に除去しきれずに残った、トリチウム(三重水素)以外の他の放射性物質の海洋放出を認める姿勢を示しました。
福島第1原発事故で大量に発生した高濃度放射能汚染水は多核種除去設備(ALPS=アルプス)で処理しても、トリチウムだけでなく他の放射性物質も除去しきれないまま残存します。ALPS処理水の海洋放出については、地元の漁業関係者などが反対しています。
会見で更田委員長は、希釈する前に法令で定める濃度を超えたALPS処理水であっても、薄めた後に告示濃度限度を全体で下回れば、放出を認めるのかと記者から問われ、「そのとおり」とのべました。
これまでも更田委員長は、ALPS処理水を希釈した上で海洋放出をするべきだと主張していました。処理水には、ALPSでは原理的に取り除けないトリチウムの他に、半減期が1570万年のヨウ素129が、排水の基準となる1リットル当たり9ベクレルの告示濃度限度を超えて検出されています。東電によると、トリチウム以外の放射性物質が排水の法令基準を超えていることは把握していたといい、使用するフィルターの性能が劣化するためと説明。再度の浄化については明言していません。
更田委員長は、仮に海洋放出をする場合、処理水を再度ALPSにかけるなど放出される放射能を低減させる努力については、「対策としてあり得る」と述べました。しかし、東電に積極的に求める姿勢は示しませんでした。
(「しんぶん赤旗」2018年8月24日より転載)