ベトナム各紙1月16日付の報道によると、グエン・タン・ズン首相は15日、同国中南部ニントゥアン省で今年に予定されていた初の原子力発電所の着工を断念し、2020年まで延期する可能性に言及しました。(面川誠)
ベトナムは東南アジア初の原発稼働を目指しており、第1原発はロシア、第2原発は日本に発注することが決まっています。ズン首相は15日に開かれた国営石油ガス公社の会合で、「(第1原発の)着工は2020年になるかもしれない。原発建設に際しては、安全が最優先であり、基準を満たしていない場合は建設計画を実施しない」と言明。火力発電のために天然ガス増産を指示しました。
原発建設については、ベトナム人技術者の育成が大幅に遅れている上に、11年3月の東日本大震災時の福島第1原発事故後、グエン・クアン科学技術相が、「法整備、資金、人材など原発インフラが全般にわたって貧弱な状態で原発建設計画が動き出した」と述べていました。
ベトナム原子力エネルギー協会のチャン・フー・ファット会長は、建設予定地内に活断層があると指摘。「原発の安全性に脅威となる可能性があるなら、予定地を変えるべきだ」と主張しています。
このほか昨年8月、中部ラムドン省人民委員会(地方行政機関)が、政府の原子力技術センター建設計画に対して、放射能汚染への懸念から建設に同意しない意向を表明。同月にはレ・ディン・ティエン科学技術次官が、「原発の建設、運用、安全管理、監視機関のあらゆる分野で専門家が不足している」と発言しています。
ロイター通信によると、今月初めにベトナムを訪問した国際原子力機関(IAEA)の天野之弥事務局長はベトナム政府に対して、原発建設を性急に進めずに、安全な管理を準備するよう促したといいます。