安倍晋三政権の下で石炭火力発電所の建設ラッシュが進められ、それに反対する住民運動が全国各地で起きています。石炭火力発電は、温室効果ガスの二酸化炭素(CO2)を多く排出するとともに、窒素酸化物や硫黄酸化物、ばいじんなどの大気汚染物質を排出するため、健康や自然への影響も深刻です。
推進してきた安倍政権
環境団体「石炭発電所新設ウォッチ」によると2012年以降の建設計画は44基、全国20道県に及びます。仙台市では、首都圏に電気を売るために関西電力の子会社が建設を進め、健康被害や環境破壊などを危ぐする住民が中止を求める署名に取り組んでいます。3カ所の計画が明らかになっている東京湾岸では地元の千葉市や神奈川県横須賀市などで住民の会が次々と結成されています。
東京電力福島第1原発事故以来、コストが安い石炭火発によってもうけようという電力会社や、電力小売り全面自由化によって商社や鉄鋼などの大企業が無秩序な発電所計画を乱立させています。
こうした建設ラッシュを推進しているのが安倍政権です。13年に閣議決定した日本再興戦略は「高効率火力発電を徹底活用」とうたいました。そのために発電所の建て替えや新増設にあたっての審査期間を短縮し、民間企業の投資環境を整備するとしました。14年に閣議決定した国の「エネルギー基本計画」では、原発と並んで石炭を「重要なベースロード電源」と位置づけました。2030年という将来の電源構成では、総発電量に占める石炭の割合を26%と現在とほぼ変わらず、再生可能エネルギー(22~24%)よりも高く決めました。将来にわたって使い続けるとしています。
石炭火発は高効率のものでもLNG火発の2倍のCO2を排出します。地球温暖化対策の新たな枠組み「パリ協定」は今世紀後半にCO2の排出の「実質ゼロ」をめざしています。安倍政権の姿勢は世界の流れに反しています。
環境省は3月末、このまま新増設が続けばCO2排出量が増加し、日本の30年度の温室効果ガス削減目標の達成が危ういことを明らかにしました。削減目標は1990年比わずか18%減という不十分なものですが、それさえ達成できないのは、あまりに異常です。
フランス、英国、カナダは石炭火発の廃止に向けた方針を発表し、脱原発のドイツも石炭依存度を低減させる方向です。中国は昨年100基以上の建設計画を中止しました。各国が石炭火発から撤退する背景には、環境規制が進めば石炭への投資は利益が回収できない“座礁資産”になるからです。
エネルギー政策の転換を
今年に入って3カ所の石炭火発の建設計画が中止や延期になりました。住民や環境団体の批判の高まりとともに、事業者は中止の理由を「電力需要の減少」「事業環境の変化」と説明します。東日本大震災以降、電力需要は減り続け、原発を稼働させなくても電力は足りている状況です。再生可能エネルギーも増え続けています。
石炭や原発という大規模集中型の電源でなく、省エネルギーの推進と再生可能エネルギーの大量普及を柱にすえて、原発にも石炭にも依存しないエネルギー政策に転換することが必要です。
(2107年5月16日付け「しんぶん」赤旗より転載)