東京電力福島第1原発事故で福島県外に避難した住民らが国と東電に損害賠償を求めた訴訟の判決が3月17日、前橋地裁でありました。原道子裁判長は津波の予見可能性があったと認め、国と東電に総額3855万円の支払いを命じました。同様の訴訟は全国で約30件、約1万2千人が参加しており、集団訴訟としては初めての判決。各地の裁判に大きな影響を与えるものになります。
前橋地裁前に各地の訴訟原告団・弁護団が駆けつけ「国の賠償責任を認める」などと書かれた幕が掲げられると拍手が起きました。
原告は福島県から群馬県に避難した45世帯(避難指示区域25世帯、“自主避難”20世帯)の計137人で、1人当たり1100万円の損害賠償を求めていたもの。
原告は、▽政府の地震調査研究推進本部が2002年に「長期評価」でマグニチュード8クラスの地震が起こりうると指摘、東電は08年に15・7メートルの津波到来を試算していた▽防潮堤設置や非常用電源設備の高台設置で事故は防げた―などとして、「国、東電は津波を予見し、事故を回避することができた」と主張していました。
判決は、▽東電は遅くとも02年7月から数カ月後の時点で事故の予見が可能だった▽国は遅くとも07年8月の時点で、東電の対応では事故対応が達成されることは期待できないとの認識があった―として、「事故を防ぐことは可能で、国が規制権限を行使しなかったことは合理性を欠き、違法だ」としました。
原告の丹治杉江さんは「国と東電の責任を認めさせました。心からうれしく思います。提訴から3年半。原告になろうか悩みました。自主避難者が損害賠償を求めることに抵抗がありました。福島から避難してきて『カネ欲しくて逃げてきたのか』と言われつらかった。この賠償額で納得できるのか今後のことを考えていきたい。夢中で6年間生きてきて、たたかってきたことは良かったと胸を張れます」と述べました。
(「しんぶん赤旗」2017年3月18日より転載)