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原子力協定 脱却が必要・・「核兵器なき世界」を妨害

高速増殖炉「もんじゅ」=福井県敦賀市

 2017年、日本は「核」とどう向き合うのか。世界にはいまだ1万発を超える核兵器が現存するにもかかわらず、日本政府は原料となるプルトニウムを生む原発を国内外で推進し、「核兵器のない世界」への流れを妨害しています。(吉本博美)

 1月から始まる通常国会では、日本がインドに原発を輸出する「日印原子力協定」が国会承認の対象になります。「日米安全保障条約の原子力版」ともいえる「日米原子力協定」が18年7月に期限切れとなるために、日米政府間で延長協議も始まる可能性があります。3月と6~7月に米・ニューヨークで行われる核兵器禁止条約を交渉する国連会議とあわせて、日本政府の立場が厳しく問われています。

■日印・・核実験の原料生み出す危険

 核実験を2度も強行し、核不拡散条約(NPT)、包括的核実験禁止条約(CTBT)のいずれも批准していないインド。2016年11月に署名した日印原子力協定は、日本の協力で建設された原発から生まれたプルトニウムが核実験の原料になる危険があり、事実上インドの核軍拡に手を貸すことにつながります。

 日本はインドが核実験を行った場合「協力を中止する」と表明しましたが、インド側の姿勢はあいまいです。

 被爆地の広島、長崎両市は、同協定に反対を表明してきました。松井一実広島市長は「インドとの(原子力協定)交渉は納得しがたい。格兵器のない世界を目指す動きが確実に広がる中、唯一の被爆国であるわが国は、核軍縮・核兵器廃絶の先頭に立つ必要がある」(13年5月)などと求め続けています。

 さらに協定は、インド国内で原発事故が起こった場合、日本政府はインド国民に責任を負わないとしています。いまだに福島第1原発事故が収束せず、多くの住民が避難するなか、外国の国民生活も危険にさらすという無責任かつ非倫理的な安倍政権の姿勢が表れています。

■日米・・核燃サイクル破綻明白だが

 日米安保条約で日本に米軍基地が存続・強化されたことと同様に、日米原子力協定によって米国から原発が押しつけられてきました。日本のプルトニウムの総保有量は約47・9トン(15年末時点、内開府報告)にも及び、核保有国以外の国では類を見ないものです。

 1953年、アイゼンハワー米大統領が国連総会で「アトムズ・フォー・ピース(原子力の平和利用)」と訴え、原発推進を呼びかけたことがきっかけです。

 日本は米国から原発の技術や燃料を導入するための原子力研究協定を締結(55年)。この協定の下、研究用の濃縮ウランが提供され始め、58年に日米原子力協定を結び米国製発電炉を導入しました。

 その後、米国の技術を用いた原発を日本国内で次々と建設しました。燃料調達の面では、濃縮ウランの約7割を一貫して米国に依存し続けています。

 88年に改定された現行の日米原子力協定では、米政府から使用済み核燃料の再処理を認められ、日本政府は推進する方針を打ち出しています。しかし、再処理を実行すればさらにプルトニウムが増える仕組みです。

 プルトニウムを燃料とする「核燃料サイクル」の実行施設、高速増殖炉もんじゅ(福井県敦賀市)は1兆円超の巨額を投じたにもかかわらず、2016年12月に廃炉が決定。政府の原子力政策の破綻ぶりが示されています。

 米国では原発を容認する一方で、日本が大量に保有するプルトニウムに懸念の声も上がっています。元米政府高官などは「日本に核燃料サイクル活動の延期を求めるべき」だなどの提言(15年9月、16年2月)を出しており、再協議される日米原子力協定の行く末が不透明な状況です。

 日本の原発を延命させるだけでなく、潜在的な核開発能力を高めることにもつながる日米原子力協定は廃棄すべきです。

(「しんぶん」赤旗2017年1月4日より転載)