原子力規制委員会が佐賀県にある九州電力玄海原発について、再稼働の前提となる新規制基準に「適合」するという審査書案をまとめました。年内には審査を終え、九州電力は来年の再稼働を目指しています。いま全国で稼働している原発は同じ九州電力の川内原発2号機(鹿児島県、1号機は検査で停止中)と四国電力伊方原発3号機(愛媛県)だけです。原発は停止していても電力は足りており、国民・住民の再稼働反対の声は広がっています。安倍晋三政権は規制委の審査を口実に原発の再稼働を急いでいますが、安全無視の再稼働は、やめるべきです。
安全を保証しない審査
原子力規制委の審査は、東京電力福島原発事故後作り直した基準にもとづいて、どの程度の地震や津波に耐えられるか、重大事故が起きた場合の対策はどうなっているかなどを審査するものです。基準には問題が多く、合格したといっても安全性を保証しません。
これまでも審査で「適合」と認められた原発で、地震や津波の想定が甘すぎることや重大事故の対策が不十分なことなどが相次いで指摘されています。川内原発や伊方原発に先立って「適合」とされたのは関西電力高浜原発3、4号機(福井県)でしたが、その後裁判所が審査の不十分さを指摘して運転を停止したままです。
規制委は廃炉が原則だった運転開始から40年以上たった高浜原発1、2号機や関西電力美浜原発3号機(福井県)についても「適合」と認めました。安全性のお墨付きにならないことはいよいよ明らかです。何より審査は事故が起きた場合の住民の避難は対象にしていないため、事故の場合の不安がどこでも指摘されています。
玄海原発の場合も佐賀平野を震源とする大地震への対策や、九州地方にある火山噴火への対策の不十分さが問題になっています。特に今年4月に発生した熊本などの連続地震の後、原子力規制委の島崎邦彦・前委員長代理がこれまでの地震対策の不十分さを指摘したのに、規制委はそれを無視して「適合」とする審査書案をまとめました。前委員長代理の警告にさえ耳を貸さない態度は大問題です。
自治体任せの避難計画は全く机上の計算で、玄海原発の場合も原発から「30キロ圏内」には佐賀だけでなく福岡や長崎の一部も含まれており、離島も少なくありません。事実上避難が困難で、こんな計画では命は守れないという声が上がっているのは当然です。
玄海原発では使用済み核燃料がたまり続けて満杯状態に近く、さらに3号機が使用済み燃料から取り出した猛毒のプルトニウムをウランと混ぜてMOX燃料にする「プルサーマル」型の原発であることも住民の不安を高めています。政府や電力会社は再稼働を急ぐばかりで、こうした住民の不安にまったく応えていません。
国民は原発運転望まない
東京電力福島原発事故はいまだに収束しておらず、国民・住民は危険な原発再稼働を望んでいません。川内原発が立地する鹿児島県に続き、東京電力柏崎刈羽原発が立地する新潟県でも再稼働に反対する知事が誕生しました。
再稼働を認めない住民の意思は明らかです。玄海原発を含め、原発再稼働は中止し、「原発ゼロ」に向かうことこそ国民の願いです。
(「しんぶん赤旗」2016年11月12日より転載)