記録的な猛暑にもかかわらず、この夏、電力は原発がなくても十分な余裕を保っていました。沖縄を除く九つの電力管内の7~8月の電力使用率を本紙が調べたところ、出力が最大となった日に使用率が95%を超えた管内は皆無でした。
電力は需給バランスが崩れると停電の恐れが高まります。電力会社は、使用率95%超で「厳しい状況」、97%超で「大変厳しい状況」になるとしています。全ての管内で出力のピーク日に使用率が95%を下回ったことで、「電力の安定には原発が必要」だという原発推進派の言い分が改めて崩れました。
東京電力福島第1原発事故以降に定着した節電や省エネルギーの効果とみられます。
関西、四国、九州の三つの管内で同時に今夏一番の出力を記録したのは8月22日午後2時でした。このときでも、使用率は九州の93・4%が最高で、関西と四国は10%程度の余裕がありました。
同時刻の九州の予備力は110万キロワット。現在稼働中の鹿児島県川内原発(178万キロワット)がないと供給が不足するようにもみえます。しかし、同じ周波数の中日本・西日本の他の電力管内だけで900万キロワットの予備力があり、広域連係や短時間の節電要請で電力は十分賄えます。
使用率が最も高くなったのは8月19日午後1時の九州の96・6%でした。すべての管内で95%を超えたのはこの1時間だけで、97%超えは一度もありませんでした。新潟県の柏崎刈羽原発の再稼働を目指している東京電力管内で90%を超えたのは4日間だけでした。
電力使用率 最大供給力に対する実際の出力の割合。発電設備は常にフル稼働してはおらず、電力会社は需要予測に基づいて日々の最大供給力の値を落とします。そのため使用率が高くても実際の出力は小さく、余力がある場合もあります。
(「しんぶん赤旗」2016年9月26日より転載)