日本学術会議の分科会はこのほど、原発の運転で発生する高レベル放射性廃棄物の処分に関して、インターネットを利用した討論型世論調査を実施しました。その結果、討議以前には、原発に「当面は依存すべき」だが最も支持を得ていましたが、討議後には「すみやかにゼロにすべき」だが逆転しました。
学術会議は2012年、原子力委員会への回答で、高レベル放射性廃棄物の処分に関して、政策を抜本的に見直し、対応方法について検討し決定するまでの時間を確保する「暫定保管」と、核のゴミの総量、またはその増加分を厳格に抑え込む「総量管理」を柱とした政策枠組みの再構築を提言しました。
討論型世論調査では、暫定保管と総量管理を中心に、政府が進める地中深くに埋める地層処分とどちらが望ましいかなどを討論し、討議前後の変化を見ています。
昨年1月から討議参加者を募集し、同3月に討議を実施しました。協力者には応募時と討議直前、討議直後に同一のアンケートを実施。有効参加者は101人でした。
参加者は第1回のアンケート後に討議用資料を配布されます。討議は、インターネット会議システムを通じて行われました。14グループに分かれ、グループごとに自由討議を75分行います。続く全体会で立場の異なる専門家集団と二つのサブテーマに関して各70分の質疑を行いました。
アンケートの結果、原発への依存度に関して、「長期的に依存はゼロにすべきだが、当面は依存すべき」だが応募時41・6%から討論後は42・6%に微増。「すみやかに依存はゼロにすべき」だが、当初34・7%だったのが討論後43・6%に9ポイント近く増えました。一方、「安定的なエネルギー源として今後も依存すべき」だは応募時16・8%から10・9%に減少しました。(図)
また、暫定保管への「賛成」は、応募時の60・4%から討論後は75・2%へ増加。総量管理に関しては、高レベル放射性廃棄物の総量が社会的に受け入れ可能な量を超える場合には、原発への依存度を見直すべきだとの意見に、応募時82・2%が賛成、討論後も85・1%といずれも高く支持されました。
一方、政府の方針である地層処分に対する賛成は、当初の32・7%から討論後は48・5%。しかし、「暫定保管と総量管理」という学術会議の提案が、政府の地層処分の方針よりも、高い支持を得ました。
討論により、国民的議論による合意形成を求める暫定保管、核のゴミの総量管理の必要性について「理解が深まることが確認できた」と分析しています。
(「しんぶん赤旗」2016年9月7日より転載)