関西電力高浜原発がある福井県高浜町の野瀬豊町長は12月3日、町議会本会議で同原発3、4号機の再稼働に同意を表明しました。野瀬町長は「高浜町として再稼働に理解をするという判断をさせていただく」と述べました。同日開かれた町議会で、日本共産党の渡辺孝議員は「同意は許されない」と批判しました。
町議会は今年3月、再稼働に同意。野瀬町長の同意で、次は西川一誠知事と県議会の判断が焦点となります。しかし、福井地裁が4月に再稼働を認めない仮処分決定を出しており、判断が覆らない限り関電は再稼働できません。野瀬町長は記者団に「司法の判断は当然重要だが、判断材料が違うので分けて考えた」などと述べました。
町長はこれまで、同意の条件として町議会の意思と原子力政策に関する国の意思の確認、原発の安全対策、住民の避難計画と広域避難体制の確認を挙げていました。高浜原発の場合、避難計画が必要な半径30キロ圏が福井、京都、滋賀の3府県にまたがり、ただちに避難が必要な5キロ圏内に京都府舞鶴市の一部も含まれます。
記者団から立地自治体以外にも「同意権」を与えるべきではないかと問われると、「最終的な同意の判断をする主体は、基本的には立地自治体」と、従来の考え方を崩しませんでした。また、事故が起きた場合の責任を問われた野瀬町長は、「自治体の長なので一端の責任は当然私にもある」と語りました。
高浜3、4号機は2月、原子力規制委員会が「新規制基準に適合している」と判断し、現在、使用前検査を実施しています。関電は3号機は来年1月下旬、4号機は同2月下旬の再稼働をねらっています。
「条件」を無視・・日本共産党 渡辺町議が批判
町長は6月議会で、再稼働同意の「条件」として、国民の理解が進むことなど四つを挙げ、それが実現しない限り同意しないと表明していました。そのなかには、広域避難の計画と関係自治体間の調整がありましたが、きょうの町長の同意表明では、地域原子力防災協議会で話し合いのめどがついたというだけで、調整をしているわけでもありません。
町民・住民の安全確保は絶対条件のはずです。避難計画にもとづいて訓練を積み重ね、住民の安全が確保されるのか、検証が欠かせません。町長は従来から再稼働に前のめりの姿勢を示してきましたが、そういうこともせず、先送り・棚上げして再稼働に同意することは、住民の安全確保を軽視するもので無責任の極みです。
福島の原発事故は、重大事故が実際に起きることを明らかにしました。いまだに10万人以上の人々が避難生活を強いられています。再稼働を認めることは、最悪の事態が発生する可能性を受け入れることで、許されません。
(「しんぶん赤旗」2015年12月4日より転載)