東芝の粉飾会計問題が尾を引いています。米原子力子会社のウェスチングハウス(WH)の多額の減損処理の公表が遅れ、謝罪会見を開きました。会見の中で経営陣は原発事業を推進していく方針を強調しました。
A 東芝は、WHの損失について、東京証券取引所から開示基準に該当するとの指摘を受け内容を公表した。これまでメディアからの問い合わせに対しても同社は、公表する必要がないとしてきたものだった。
B WHは、2012年度と13年度に、資産の評価を低く見直す「減損処理」を当時の為替レートで計1156億円実施していたが、公表していなかったんだ。
「隠蔽」と批判も
C 専門家から「事実上の隠蔽(いんぺい)」との指摘がされていた問題だね。
A 11月27日の記者会見で室町正志(まさし)社長は、「適時、適切なタイミングで情報開示すべきだった」と謝罪し、今後は「積極的な情報開示に努める」としたが額面どおりには受け取れないな。
B 原発を推進する姿勢も露骨だった。中国、ベトナム、トルコ、さらにはインド、アメリカなど世界全体で400基以上の建設計画が見込まれる中、東芝としては64基の受注を目指す方針も発表した。
A 会見では志賀重範(しげのり)副社長は「温室効果ガス削減のためには原発は必要」「世界的に原子炉がどんどん建っていく。非常に大きな期待がある」などと述べた。
C 東京電力福島原発の大惨事から何も学んでいない。「カネ」さえもうければいいのか。あきれてしまうよ。
A 東芝が設置した第三者委員会の調査報告書も問題になっているよ。
B 弁護士や大学教授で構成する「第三者委員会報告書格付け委員会」(委員長・久保利英明弁護士)が11月26日、評価結果を発表した。この評価は各委員が、A、B、C、Dの4段階で行い、内容が著しく劣り、評価に値しない報告書についてはF(不合格)とするもの。8人のうち久保利委員長ら3人が不合格とした。
A 大手メディアは、東芝の粉飾決算問題を「不適切会計」などと報道し、「粉飾」という用語は避けてきた。第三者委員会の報告書が「不適切会計」との表現を使っていたことと関連がある。久保利氏は、報告書が「違法もしくは故意による不正」を意味する「不適正」との表現ではなく、「軽度なミスもしくはささいな過誤」を意味する「不適切」との表現にとどまっていることを問題視したね。
事態を過小評価
B 塩谷喜雄氏も「不正」な会計処理を、法制度的な意味合いがあいまいな「不適切」会計処理と言い換えているのは「事態を過小評価するバイアス(偏向)がかかっている証左といえる」と指摘している。
A 再発防止策についても、久保利氏は報告書には「経営陣の責任の自覚」「関与者の責任の明確化」「経営トップの意識改革」など抽象的な文言が並んでいるだけで、「東芝の現況に鑑みれば、実効性は期待できず、いずれも絵空事のように思われる」と指摘している。
B さらに塩谷氏は第三者委員会の報告書が原発事業の構造的不振に関して言及がないことを批判し「原発事業についてのみ、意図的に背景と動機の調査・検証・記述を回避した結果だと、解釈するほかない」「政、官、財一体となった原発輸出など、『国策民営原子力』への配慮から、背景と動機の調査を回避したのだとすれば、言葉を失う」とした。
自民に多額献金
C 東芝は、自民党の政治資金団体に2850万円(2014年)もの献金をしているが、原発輸出推進の現経営陣に対しても鋭く突き刺さる指摘だ。
(「しんぶん赤旗」2015年12月1日より転載)