九州電力が11日に鹿児島県薩摩川内市にある川内原発1号機の起動を強行します。臨界に達したあと14日には発電を開始する予定です。九電は引き続き2号機についても再稼働を狙っています。原発の再稼働は、東京電力福島原発事故のあと全国の原発が相次いで運転を停止し、一昨年9月に最後の関西電力大飯原発が停止して以来初めてです。安倍晋三政権は再稼働を「事業者の判断」だといいますが、福島原発事故も収束しない中での再稼働は、政権の「判断」で推進したものです。国民の安全を置き去りにした原発始動は、安倍政権の責任が重大です。
国民は再稼働求めてない
全国の原発が停止していたこの2年近く、政府や電力業界が宣伝した電力不足は起きませんでした。国民の圧倒的多数は、東電福島原発事故がいまだ収束していないことに心を痛め、安全が保証できない原発の再稼働に反対しています。現在の原発では事故を完全に防ぐことができず、いったん放射性物質が外部に漏れだすような事故が起きれば、広範囲に被害が拡散し、その影響は長期間にわたることが明らかになったからです。
にもかかわらず、原子力規制委員会が東電福島原発事故後つくった新しい規制基準に「適合」すると判断した原発は再稼働を認めると、原発の運転を推進してきたのは安倍首相をはじめ政権側です。
安倍政権が昨年4月に決めた「エネルギー基本計画」は、原子力は「重要なベースロード電源」だと明記し、原子力規制委が規制基準に「適合」すると認めた場合は「再稼働を推進する」と明記しました。今年6月に決めた「長期エネルギー需給見通し」では2030年度時点の原子力の比率を22~20%としました。再稼働を推進した政権の責任は明らかです。
原子力規制委の田中俊一委員長は審査に「適合」しても安全が保証されるわけではないと繰り返し、川内原発の地元でも運転再開への不安と批判が渦巻いていました。それに対し昨年、「政治とカネ」の問題で辞任する直前の小渕優子前経済産業相が鹿児島県知事や薩摩川内市長に文書で再稼働を要請し、後任の宮沢洋一経産相も現地を訪れて、「万一事故が起きた場合は国が責任を持って対処する」からと抵抗が広がるのを抑え込んだのです。政権側の責任は極めて重いというほかありません。
実際にはその言葉とは裏腹に、安倍政権は住民に対して責任を果たしていません。日本共産党の笠井亮議員が7日の衆院予算委で追及したように、周辺自治体などが求めた説明会さえ宮沢経産相は「九電が個々に説明している」と開催に応じず、まさに九電任せです。最近も菅義偉官房長官が「再稼働は九電の判断」と言い放ちました。再稼働を推進しながら責任は取ろうとしない政権の姿勢がいよいよ問われることになります。
運転開始しても問題山積
川内原発は再稼働しても、規制委の審査で不十分さが浮き彫りになった火山噴火への対策や、地元自治体に丸投げした事故のさいの避難計画など、問題は山積しています。1号機の再稼働をこのまま進め、2号機や全国の原発にも再稼働を広げていくなどというのは絶対に許されません。原発再稼働の推進ではなく、一日も早く全国で「原発ゼロ」を実現すべきです。
(「しんぶん赤旗」2015年8月11日より転載)