【パリ=島崎桂】欧州連合(EU)は10月23、24の両日、ブリュッセルで開いた首脳会議で、2030年までに温室効果ガスの排出量を1990年比で40%削減することで合意しました。
EUのこれまでの目標は「20年までに20%削減」でした。今回これを上回る目標を示したことで、今後は他国にも、高水準の目標設定を促していくことになりそうです。
会議ではこのほか、30年までにエネルギー消費に占める再生可能エネルギーの割合を27%に高めることで合意。エネルギー効率を07年比で27%改善する目標も定めました。
EUのファンロンパイ大統領は「世界で最も野心的だ」と合意を歓迎。来年末開かれる国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)議長国フランスのオランド大統領は首脳会議前、「欧州での合意が得られずに、どうして(大量排出国である)中国や米国を説得できるのか」と述べていました。
世界第5位の排出国である日本政府の目標は、削減どころか、1990年比で3・1%増となるもので、各国政府などから強い批判を浴びています。
解説・・COP21前に新目標 「40%減では少な過ぎる」と批判も
欧州連合(EU)が首脳会議で、温室効果ガス排出削減目標をこれまでの「2020年までに1990年比で20%削減」から「30年までに40%削減」に引き上げた背景には、来年末パリで開かれる国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)で、議論をリードしたいとの思惑があります。
COP21では、20年以降の各国の温室効果ガス削減目標など、京都議定書(1997年に採択)に代わる新たな国際的枠組みを決定します。
今回EUが合意した措置には、▽温室効果ガス排出量の多い石炭に依存する東欧諸国に対するエネルギー生産技術の近代化を支援する基金の設置▽エネルギー消費の効率化に向け、EU加盟国間の送電線やガスパイプラインの相互接続の強化―も盛り込まれました。域内の懸念に一定配慮したものといえます。
ただ、50年までに世界の平均気温上昇を産業革命前に比べて2度未満に抑えるとしたCOPの最終目標に照らすと、今回の合意内容も十分とはいえません。
英BBC(20日付電子版)によると、「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」のジム・スキー共同議長は「30年までに(温室効果ガスの)40%削減では少なすぎるし遅すぎる」と批判。仮に30年までの目標を達成しても、その後の20年間はさらに3倍のペースで削減する必要が生じ、最終目標の達成はほぼ不可能になるとの見通しを示しました。
(パリ=島崎桂)
(「しんぶん赤旗」2014年10月25日より転載)