九州電力をはじめ、北海道、東北、四国の各電力会社が自然エネルギー(再生可能エネルギー)の買い取りを中断し、東京、関西、沖縄電力も制限を設けています(下の一覧)。「原発再稼働を前提にした自然エネルギーつぶしだ」と批判の声が上がっています。
(君塚陽子)
▼1日から中断する・・北海道電力、東北電力、四国電力
▼9月25日から中断・・九州電力
▼太陽光に接続上限を設定・・沖縄電力
▼一部地域で太陽光を制限・・東京電力、関西電力
政府も制度見直し検討
各電力会社には、管内の発電事業者が太陽光や風力など自然エネルギーでつくった電気を買い取ることが義務づけられています。
川内原発の再稼働に前のめりの九州電力が中断したことに対し、「反原発・かごしまネット」代表の向原祥隆さんは「露骨な自然エネルギーつぶし」と驚きます。
九州電力が中断した理由は、現在の買い取りの申し込みがすべて発電すると太陽光・風力で約1260万キロワットとなり、電気の使用が少ない春や秋などには供給を上回り、需給バランスが崩れ、安定供給ができない、というもの。説明資料では、「需給のバランスが崩れると大規模な停電となる恐れ」と脅します。
向原さんは「九電は″需給バランス″を強調しますが、本当に手を尽くしたのか疑問です」と批判します。
九州電力の発表に対し、「透明で中立的な送電網運営が不可欠」とのコメントを発表した自然エネルギー財団の大野輝之常務理事はいいます。
「1260万キロワットというのは定格出力、つまり最大限に発電した場合の数値で、実際とは違います。導入済みの300万キロワットの発電実績など、送電網に関するさまざまなデータを情報公開することがまず必要です」
九州電力は申し込みへの回答を保留する一方、今後、揚水運転や連系線の活用などの改善策を検討するといいます。
これに対し、大野さんは、「自然エネルギーの割合を3、4割と高めているドイツやデンマークには、変動する電源を安定的に取り込むための系統運用技術があります。改善策の検討を電力会社任せにせず、国の指導や助言が必要」と指摘します。
一方、経済産業省は30日、再生可能エネルギーの普及の在り方を検討する委員会を開催。送電線の容量や電力需要など買い取り制度の見直しの検討を始めました。
制度見直しのための作業部会の設置も決めました。同省の新エネルギー対策課は「国のエネルギー基本計画では自然エネルギーの導入目標は2030年21%。買い取り制度で認定されたものはすでに20%。再生工ネ導入の最大化が国の目標ではありません」とします。
現在、総発電量に占める再生エネでの実際の発電量は2%程度。
元立命館大学教授の和田武さんは、「太陽光や風力が増えることで電気の質が悪くなることは全くありません。気候サミットも開かれたように温暖化対策が急がれています。国が自然エネルギー導入の高い目標を持ち、送電網の整備や運用に責任を持つべきです」と話します。
(「しんぶん赤旗」2014年10月01日より転載)