国連の気候変動サミットが開かれ、約160カ国・地域の首脳や閣僚が参加して、2020年以降の温室効果ガス削減の新たな枠組みづくりにむけた交渉の加速を協議しました。新たな枠組みは来年末の気候変動枠組み条約締約国会議(COP21)までに決める予定です。日本からは安倍晋三首相が出席しましたが、20年以降の削減目標については「できるだけ早く提出する」とのべただけでした。原発への依存度を高めることで温室効果ガスの発生を抑えるという政策が破たんしているためで、原発も温暖化もない世界実現へ、責任を果たすことが求められます。
目標提示遅れる日本
気候変動サミットの冒頭、国連の潘基文(パンギムン)事務総長が「われわれは歴史をつくるためにここにいる」とあいさつしたように、温室効果ガスを削減し、地球の温暖化を抑えることは、いまや待ったなしの課題です。国連の専門家会議「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」は今年春までに発表した三つの作業部会報告で、地球の平均気温の上昇を産業革命後「2度未満」に抑えるためには、温室効果ガスの排出量を50年までに1990年比で40~70%削減する必要があると指摘しました。
20年以降の温室効果ガス削減の枠組みづくりのために求められている、来年3月までに各国がそれぞれの目標を提示するために残された時間の猶予はわずかです。欧州連合(EU)は近く、「30年までに1990年比40%削減」の目標を決めようとしています。アメリカは目標を示していませんが、来年3月までに提出するとしています。「できるだけ早く」というだけで目標の提示を明言しない日本政府の態度は、国際的に立ち遅れているのは明らかです。
日本はこれまで、大気中の温室効果ガスを安定させるため、先進国・途上国が「共通に有しているが差異のある責任」を果たすという気候変動枠組み条約に参加し、1997年に締結された京都議定書(05年発効)では08年から5年間で温室効果ガスを1990年に比べ6%削減することを約束してきました。しかし日本の削減計画は、原発を増やし石油や石炭など化石燃料の比重を減らして、温室効果ガスを減らすのが前提です。
このため11年3月の東日本大震災による東京電力福島第1原発の事故後は原発運転の見通しが立たず、目標を提示できなくなっています。安倍政権が昨年暫定的に示した、20年までに05年比で3・8%削減するという目標も、国際基準の1990年比では逆に3・1%増になると批判されてきました。
原発には「障壁とリスク」
温室効果ガスの削減のためには、省エネなど低エネルギー社会への転換や、温室効果ガスを排出しない太陽光など再生可能エネルギーの活用が不可欠です。日本はこの面でも立ち遅れています。
日本政府にまず求められるのは、原発依存への固執をやめることです。いったん事故が起きれば取り返しがつかないだけでなく、建設そのものにばく大なエネルギーを必要とし、省エネや再生エネルギーの取り組みも妨げます。
IPCCの報告書も原発には「各種の障壁とリスクが存在する」と指摘します。「原発ゼロ」を実現し、原発も温暖化もない世界の実現に貢献すべきです。
(「しんぶん赤旗」2014年9月25日より転載)