福島第1原発 放射性物質除去設備「アルプス」全停止・・汚染水“切り札”トラブル頻発
東京電力は5月20日、福島第1原発の汚染水から放射性物質を除去する設備「ALPS」(アルプス)で、水の白濁などが見つかったため、汚染水処理を停止したと発表しました。アルプスは、3系統のうち2系統がすでにトラブルで処理を停止しており、今回、全系統とも処理ができない事態となりました。
国と東電はアルプスを汚染水対策の“切り札”として位置づけてきましたが、昨年(2013年)3月の試運転開始以来トラブルが絶えず、本格的な運転の見通しはたっていません。地下水の流入で増え続ける汚染水の処理が停滞することが懸念されます。
東電によると、処理運転中だったC系統の同日の定例サンプリングで、水の白濁と通常より数倍高いカルシウム濃度を確認。同日午前9時に水処理を停止して、待機運転に切り替えました。原因は調査中で、汚染水処理の再開時期のメドはたっていないといいます。
アルプスはA系統で17日に同様の異常が発生し水処理を停止したばかりで、運転再開時期は未定。A系統では3月27日に白濁した水が確認されて停止し4月22日に運転再開しましたが、その約2時間後に弁の操作ミスで水の白濁とカルシウム濃度の上昇が発生して停止するなど、トラブルが相次いでいます。
またB系統では、3月にフィルターの不具合で性能が大幅に低下する事故が発生し、処理できない状態が長期間続いています。東電は、来週にも汚染水処理を再開する計画だとしています。
多核種除去設備「ALPS」・・
(アルプス)建屋地下などにたまった放射能汚染水をセシウム除去装置などに通した後に、62種類の放射性物質を大幅に低減させる設備。1系統当たり日量で250トンの汚染水を処理できます。トリチウム(3重水素)は除去できません。東電は、アルプスで処理した汚染水の海への放出を狙っています。
福島第1放射能濃度上昇続く・・海水と護岸地下水
東京電力は5月19日、福島第1原発の港湾内の海水や護岸地下水の放射能濃度の測定値を公表しました。4カ所の測定点で過去最高値を更新するなど、汚染が深刻化する領域の拡大傾向が続いています。
それによると、4カ所で各地点のそれまでの最高値を約2〜63%上回りました。1、2号機取水口間の表層で18日に採取した海水から、1リットル当たり1700ベクレルの全ベータ(ストロンチウム90などデータ線を出す放射性物質)を検出。同じ測定場所の下層から15日に採取した海水からは、同2600ベクレルのトリチウム(3重水素)を検出しました。
護岸では、3、4号機間海側の地下水(14日採取)から同2800ベクレルを検出。2、3号機ウエルポイントくみ上げ水(同)から同5600ベクレルのトリチウムを検出しました。
(「しんぶん赤旗」2014年5月21日より転載)