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原災指針 規制委が改定/複合災害に具体策なし

原子力規制委員会は10日、原発事故の際の被ばくを低減する目的で行う屋内退避の運用に関して原子力災害対策指針(原災指針)の改定を決定しました。避難計画などの実効性が特に懸念される原発事故と自然災害が同時発生する複合災害について具体化はありませんでした。

 現在の原災指針は、原発事故が発生し周辺住民に放射線の影響の恐れがある場合、原発から5キロ圏内の住民は避難を実施。5~30キロ圏内の住民は屋内退避し、その後、空間の放射線量の測定結果に応じて避難などに移行することになっています。

 今回の改定は、屋内退避の継続は3日目を目安に判断し、屋内退避中も一時的な外出や住民の生活を支える民間事業者の活動が実施できるとしています。

 昨年1月に発生した石川県の能登半島地震では、家屋の倒壊、断水、避難路の寸断が発生し、一部の放射線防護施設は損傷して利用できない事態が起きました。同県に立地する北陸電力志賀原発で事故が起きていれば、多くの住民が屋内退避も避難も困難であったと危惧されました。

 日本は地震、津波などの自然災害を起源とする原子力災害のリスクが高いとされています。実効性のある原子力災害対策を考える上では、複合災害の想定は不可欠となります。

 規制委は今年6月に改定案を示し、パブリックコメントを募集しました。「屋内退避しても被ばくは避けられない」「複合災害を想定し、指針にその対策を示せないならば、原発を止めて」など104件の意見がありました。原子力規制庁の担当者によれば、避難ではなく屋内退避をすることへの疑問や複合災害時の実効性などへの意見が多かったとしています。

 規制庁は今後、屋内退避の考え方や運用などを説明する関連資料案を作成する予定です。

(「しんぶん赤旗」2025年9月11日より転載)