【ワシントン=石黒みずほ】米東部ニューヨーク州のホークル知事は18日、閉鎖された原子力発電所から放射性物質を含む汚染水をハドソン川に放出することを禁止する法案に署名し、同法案は成立しました。住民らによる反対運動が実り、環境団体らは「住民の力が企業に勝った」と歓迎しています。
2021年に閉鎖されたインディアンポイント原発の廃炉作業に取り組む企業「ホルテック・インターナショナル」は2月、100万ガロン以上の使用済み核燃料の貯蔵プールの水を放出する計画を発表。これには、がん、流産などを引き起こすリスクがある放射性物質トリチウムが含まれており、住民の間で懸念が広がっていました。
ハドソン川の水は10万人以上の飲料水となるほか、カヌーや水泳を楽しむ場所にもなっています。計画が発表されて以降、ハドソン川周辺の35自治体や138の市民団体が計画への反対を呼びかけ、オンライン署名には約45万人が参加。5月の実施予定が、9月に延期されていました。
州議会に提案された同法案は6月、下院を通過し、上院では全会一致で可決されました。
ホークル氏は声明で、ハドソン川は州の重要な天然記念物であり、「次世代のために、団結して守っていかなくてはならない」と述べました。
非営利団体「食料&水ウオッチ」のアレックス・ビューチャンプ北東地域所長は「知事は汚染企業に対し、私たちの水に産業廃棄物の存在の余地はないという強いメッセージを発している」とし、「法案は企業の都合よりも公衆衛生や環境を優先することを保証した」と述べました。
同原発はニューヨーク市から約60キロほどの位置にあり、これまでも変圧器の火災や地下水のトリチウム汚染など問題が多く、17年に当時のクオモ知事と電力会社の間で閉鎖に合意しました。
(「しんぶん赤旗」2023年8月21日より転載)