東京電力は10月15日、福島第1原発(福島県大熊町、双葉町)で相次いでいるタンクからの放射能汚染水漏れ事故について、原因や対応策をまとめた報告書を原子力規制庁に提出しました。そのなかで、対策に不可欠な要員配置や体制をとらないまま作業を進めていたことなどが根本原因であることを認めました。
報告書は、今月1日にホースの接続ミスで汚染水がタンクから推定5トンあふれ出た事故で、水の移送作業を1人で実施せざるを得なかった状況だったとしました。
傾いたタンクに過剰注水して高濃度の汚染水が外洋流出した2日の事故では、地盤が傾いていることを知りながら、どれだけ傾いているのか実測していなかったことをあげました。繁忙な状況が継続し要員が不足しているもとで手順書も作成されず、水位の確認作業も不十分だったとしています。
これらの現場管理上の問題点として、作業計画などの不備、危険性の予測やリスク管理の不十分さ、多忙による意思疎通の不足などをあげました。
東電によると、汚染水タンクなどの水処理管理要員は、台風の影響が深刻化した9月中旬から、ホースの接続ミスによる汚染水漏れが発生した10月1日までに約120人増員していました。現在、約80人を増員する計画を進めており、そのうち柏崎刈羽原発からは約20人。
原子力規制委員会は今後、今回の対応策が妥当かどうか内容を確認したうえで、東電が申請した柏崎刈羽原発6、7号機の安全審査の進め方を判断するとみられます。
汚染水対策をめぐっては、日本共産党の倉林明子参院議員が7日の国会質問で、東電の人員配置が不十分だと指摘。柏崎刈羽原発の再稼働準備を中止し、人手や資金を福島第1原発事故の処理に回すよう求めました。
東電 タンクからの汚染水漏えい・・「パッキンずれ落ち」
東京電力は10月15日、原子力規制委員会の汚染水対策検討ワーキンググループの会合で、福島第1原発でタンクから高濃度の放射能汚染水が300トン漏れた原因について説明しました。タンク底部で気温の変化などによる接合部の熱膨張や水圧の影響などによって、漏えいを防ぐためのゴム製のパッキンが徐々にずれ落ち、そこから汚染水が漏えいしたと推定しました。
規制委の更田豊志委員は「施工管理に不備がないというなら、どのタンクも遅かれ早かれ漏えいする。その可能性に対処せざるを得ないと考えるのが妥当」と指摘しました。
また、会合では、タービン建屋海側にあるトレンチ(地下のトンネル)などから汚染水が地下へ漏れ続けている可能性が指摘されました。
東電は、護岸付近で、汚染された地下水の海への流出を減らすため、水ガラスを地中に注入し地下遮水壁を設けた上、8月15日から汚染された地下水を1日約51トンくみ上げています。しかし、くみ上げる地下水の放射能濃度が変わっていません。このため、会合で、近くのトレンチなどから「(汚染水が)継続して供給されていると考えるべきだ」と指摘されました。
更田委員も、港湾内の海水の放射能濃度の低下が見られないことなどを指摘し、「対策の効果が現れていない。汚染水のまま海に漏れている経路があるのではないか」と述べました。