敬三 毎年、およそ2100億円なんだって。
藤乃 莫大(ばくだい)な金額だけど、何のお金?
廃炉は険しいね
敬三 東京電力福島第1原発の廃炉費用について、会社の説明だ。
藤乃 事故から10年以上がたつけど、炉心溶融(メルトダウン)した核燃料デブリのこともあり、まだ先は険しいね。
敬三 避難指示が解除され、住民の帰還が始まった地域でも、実際に戻った人はまだ少ない。
藤乃 帰還困難区域の国道を実際に通った人の話では、飲食店や家電量販店など、震災時の風景のまま廃虚と化していると言っていたよ。
敬三 ニュース映像で見たけど、とっくにロゴデザインを変更した企業の古い看板もそのまま残っていて、まさに時間が止まったままだ。
藤乃 多核種除去設備で処理した後の高濃度トリチウム(3重水素)が含まれた汚染水が毎日増え続けている。それを海洋放出する準備としてタンクを使う試験も始まるとの報道も耳にしたよ。
敬三 住民、漁業者、自治体などが反対しているにもかかわらず、今月には試験が開始される。
藤乃 放出基準値未満に薄めるというけど、国民的な合意がないまま強行すれば、将来に禍根を残してしまうね。
敬三 政府や財界は事故前にはひたすら「原発は安全」といっていた。現実に事故が起きると、問題山積、解決の糸口も見えない。
藤乃 福島に限らず、原発は維持管理するだけでも莫大な費用がかかる。それは市民が払う電気代へ上乗せになるね。
敬三 ひとたび起きれば、もはや一民間企業の手には負えなくなるのが原発事故だ。事故がなくても、放射性廃棄物の問題もある。
藤乃 それに、原発が止まっていても、電力不足は起きていない。原発が必要という財界などの主張に根拠はないね。
暮らしは戻らず
敬三 原発が低コストという言い分もおかしい。福島の現実を見れば、やはり高コストだ。
藤乃 帰宅困難になった地域の人などにとって、失われた故郷での暮らしは戻らないよ。
敬三 安全性の観点からも、維持だけで厳重な管理が必要な原発は廃炉にするのが将来のためにも必要だ。
(「しんぶん赤旗」2022年2月5日より転載)