日本原子力発電の東海第2原発(茨城県東海村)の運転差し止めを命じる判決が水戸地裁で出されました。判決は、原発事故が起きた際、「実現可能な避難計画が整えられていると言うにはほど遠い」と指摘しました。
同原発の30キロ圏内には約94万人が居住しています。住民の安全を置き去りにした早期再稼働の企てに司法が「待った」をかけたことは画期的です。日本原電は判決に従い、再稼働をきっぱり断念すべきです。
人格権侵害の危険を指摘
判決が重視したのは、住民を守る最後の手段である避難計画についてです。原子力災害は、2011年の東京電力福島第1原発事故のように地震や津波などの自然災害に伴う発生が想定されなければならず、「人口密集地帯の避難は容易でない」と述べ、実効的な避難計画の策定が担保できるということに疑問を示しました。
東海第2では、避難計画の策定を義務付けられている県と30キロ圏内の14自治体のうち、策定済みは比較的人口の少ない5自治体にとどまります。判決では、避難人口27万人余を抱える水戸市などで計画がない上、策定済みの5自治体の計画でも大規模地震時の住宅損壊や道路寸断が想定されておらず、複数の避難経路も設定されていないことなどを問題視しました。
避難が極めて困難である現実を具体的に検証して「安全性に欠ける」と明確に認定し、原発の運転は人格権侵害の危険があると結論付けた判決は、住民の願いに沿ったものです。
水戸地裁が示した判断は、全国の原発に共通する問題です。原子力規制委員会の新規制基準で、避難計画は審査の対象になっていません。避難対策は自治体任せです。再稼働の「合格」が出された原発でも避難の実効性が保障されているところは一つもありません。住民を安全に避難させる体制もなく、再稼働をすすめる無責任なやり方は許されません。
判決は、原発事故対策で「一つでも失敗すれば、事故が進展、拡大し、多数の周辺住民の生命、身体に重大かつ深刻な被害を与えることになりかねず、他の科学技術の利用に伴う事故とは質的にも異なる特性がある」と指摘しました。また、原発事故の要因となる自然災害の予測は確実に行えず、「原子炉施設から放射性物質が周辺の環境に絶対に放出されることのない安全性(絶対的安全性)を確保することは、現在の科学技術水準をもってしても、達成することは困難」と警告しました。10年前の福島原発事故の大きな教訓です。
「安全神話」を復活させ、無謀な原発再稼働路線を加速させる菅義偉政権の責任は重大です。原発ゼロの道に踏み出す政治に転換することが急務です。
住民の声踏まえ廃炉こそ
首都圏で唯一の原発である東海第2は東日本大震災の際、地震と津波で外部電源を失うなど重大事故寸前に陥りました。1978年の運転開始から40年を超える老朽原発でもあります。福島原発事故後に定めた「運転期間は原則40年」というルールをないがしろにして、再稼働を認めた規制委の姿勢が改めて問われます。
東海第2を再稼働させる道理はいよいよありません。住民の声にこたえ、廃炉にすべきです。
(「しんぶん赤旗」2021年3月21日より転載)