東日本大震災で破壊された東京電力福島第1原子力発電所の事故から7年を迎え、住民全員の帰還も原発の廃炉も見通しが立っていないのに、関西電力が大飯原発3号機(福井県おおい町)の再稼働を強行しました。大飯原発は福島事故後いったん再稼働させようとしましたが、福井地裁の判決で運転が差し止められていたもので、訴訟は継続中です。原子力規制委員会の審査に合格した原発は運転させるという安倍晋三政権の方針にもとづき、「立地自治体の同意」を口実に行われる再稼働は、国民・住民の声に背くものです。
福島原発事故起きた月に
関西電力は5月には大飯原発4号機も再稼働させる計画です。九州電力も今月中に玄海原発3号機(佐賀県)を、5月には同4号機を再稼働させようとしています。福島原発事故が起きた月に、事故の反省も忘れたかのように相次いで再稼働を強行する、安倍政権と電力業界の姿勢は言語道断です。
大飯原発も玄海原発も昨年再稼働を予定しましたが、データを改ざんした神戸製鋼所の部品が使われていたため延期されました。冬場の電力需要期でも電力は足りており、再稼働を急ぐ必要はありません。住民の安全より電力会社の利益を優先させる態度です。
電力会社は原子力規制委の審査や、「立地自治体」の「同意」を再稼働の口実にします。しかし規制委の審査が安全性を保証しないことは規制委自身が繰り返し認めています。「立地自治体の同意」と言っても県とおおい町だけで、事故の際の避難計画が求められる「30キロ圏内」でも、県内の他の自治体や隣接した京都府、滋賀県は同意していません。
大飯原発の運転再開を差し止めた2014年5月の福井地裁判決は、原発の運転によって250キロ圏内の住民の「人格権が侵害される具体的な危険がある」としました。「人格権」とは国民の生存を基礎とし、「最高の価値を持つ」(同判決)もので、司法が判決そのもので運転を差し止めたのは重大な重みがあります。裁判は名古屋高裁金沢支部で控訴審が続いており、元原子力規制委員長代理の島崎邦彦氏が耐震性で考慮すべき地震動が過小評価されていると証言しました。控訴審の結論も出ていないのに再稼働を強行すること自体、司法を軽視したものです。
大飯原発は「原発銀座」ともいわれる若狭湾沿いに立地しており、昨年再稼働を強行した高浜原発3、4号機(福井県高浜町)は大飯原発から十数キロしか離れていません。老朽化した高浜原発1、2号機や美浜原発3号機(同県美浜町)も再稼働を狙っています。複数の原発が事故を起こした場合どんな悲惨な事態が起きるのか検討したこともないのに、内閣府や福井県は、現在の避難計画で「対応可能」と強弁します(本紙2月16日付)。住民の命を軽視するものです。
原発ゼロ法案を成立させ
福島原発事故7年を目前にした調査で、原発は「将来ゼロ」が64%、「すぐゼロ」が11%と合わせて7割を超えました(「東京」4日付など)。再稼働反対が61%という調査もあります(「朝日」2月20日付)。
市民団体が原発ゼロ法案を提案し日本共産党など野党4党が共同で法案を国会に提出しています。再稼働の強行を許さないためにもゼロ法案の成立を急ぐべきです。
(「しんぶん赤旗」2018年3月15日より転載)