日本が国内で石炭火力発電所の新設計画をすすめ、アジアなどへ輸出を推進していることに国内外で批判が高まっています。昨年11月にドイツのボンで開かれた国連気候変動枠組み条約の第23回締約国会議(COP23)で「パリ協定」実施に向け各国が協調して臨むという合意が結ばれ、今年12月のポーランドでのCOP24では同協定実施のルール作成が行われます。このように国際的には先進国でも途上国でも「脱炭素」「脱石炭」の流れを加速させる努力が続いているもとで、石炭火発の拡大路線に走る安倍晋三政権と電力会社の姿勢はあまりに異常です。
国内外で批判される政権
COP23では、英国とカナダが主導し「脱石炭に向けたグローバル連盟」を呼びかけ、フランス、オランダ、ベルギーなど20カ国と、米国やカナダなどの七つの州政府が参加、石炭火発の廃止に向けた宣言をしました。その後も参加国・自治体は大きく広がっています。宣言では「世界の気温の上昇幅を2度未満に抑えるとともに1・5度未満に近づける」というパリ協定の目標を達成するために「先進国では2030年までに、その他の国でも2050年までに石炭の使用を段階的に停止する必要がある」と訴えました。
石炭火発は火力のなかで最も二酸化炭素(CO2)の排出量の多い発電で、液化天然ガス(LNG)火力の2倍以上です。地球温暖化を防ぐうえで、脱炭素・脱石炭化が極めて切実な課題であることは明らかです。
安倍首相は22日の施政方針演説で「世界の脱炭素化をけん引していく」とのべました。しかし、実際にやっていることはまったく正反対です。国内では、既存の約90基の石炭火発に加えて、新設計画が約40基に上っています。この計画がすべて実現されれば石炭火発の能力は4割増となり、政府自身がかかげる2030年度のCO2削減目標すら、6000万トン以上超過するとの試算がだされています。
仙台市が昨年末、石炭火発の新立地を「自粛するよう強く求める」抑制方針を打ち出したことは注目されます。環境相が今月、中国電力が島根県浜田市で計画する石炭火発の新増設にたいして、温暖化対策がない限り建設は「容認されるべきではない」という意見書を経済産業相に提出したことも、野放図な石炭火発推進に道理がないことを示すものです。
日本が官民一体でアジア諸国での石炭火発の新設をすすめていることや、昨年の日米首脳会談で、パリ協定から脱退表明をしたトランプ政権と、石炭火発技術を輸出する方針で一致したことには国際的な批判がわき上がっています。
「基幹電源」たりえない
安倍政権がエネルギー基本計画で、原発とともに、石炭火発を「ベースロード(基幹)電源」に位置付け、活用していくとしていることは重大です。石炭火発を「高効率」にすると言いますが、削減される排出量は10~20%程度にすぎず、新規に増やされれば総量の規制にはなりません。
原発の再稼働中止、原発ゼロとともに、石炭火発から脱却して、発電コストが世界的に低下してきた太陽光、風力など再生可能エネルギーによる電力供給に大胆に転換すべきときです。
(「しんぶん赤旗」2018年1月29日より転載)