東京電力福島第1原発事故で福島県から千葉県に避難した住民18世帯45人が、国と東電に計約28億円の損害賠償を求めた訴訟の判決が9月22日、千葉地裁(阪本勝裁判長)であり、国は津波を予見できたものの事故は回避できなかったとして、国への訴えを棄却しました。一方、東電に対し原告のうち42人に総額3億7600万円余りの賠償を命じました。
地裁前で、「国の責任を否定」と書かれた幕が掲げられ、判決後の報告集会では原告や弁護団から「不当判決」と声が上がり、控訴する方針です。
同種の集団訴訟は全国で約30件あり、2例目。今年3月の前橋地裁判決は、国の責任を認めていました。
最大の争点となった同原発の敷地の高さを超える津波の予見可能性について、判決は、国が2002年に公表した「長期評価」によって、国は遅くとも06年までに予見ができたと認めました。しかし、津波による浸水から電源喪失を回避する措置をとっても事故を回避できなかった可能性もあると指摘。
その上で、電源喪失を回避する措置を講じるよう東電に命じなかった国の責任を、判決は「許容される限度を逸脱して著しく合理性を欠くと認められない」と否定しました。
賠償の問題では、原告が主張した、地域コミュニティーなどを喪失したことによる「ふるさと喪失」慰謝料について、「避難生活に伴う慰謝料では填補(てんぽ)しきれないものは、賠償の対象となる」と初めて認めました。「自主的避難者」についても、避難に合理性が認められる場合、賠償の対象となるとしました。
国の責任を認めない判決に怒りの声が上がりました。
原発被害者訴訟原告団全国連絡会の佐藤三男事務局長は「怒りをもって抗議したい」と言います。「原発事故は今も続いています。被害者の実態に寄り添っていない。いったい責任はどうなるのか。責任は絶対に免れない。10月10日の生業(なりわい)訴訟の判決では明確な判決をもらって勝利したい」。
生業訴訟原告団長の中島孝さんは「事故を起こしても仕方がない。危険はあったが何もやらなくてもいいという無謀な判決だ。国民の納得は到底得られないだろう。国を擁護し、国を忖度(そんたく)した不当判決です。生業訴訟では国民の不安に応えられる判決を勝ち取るように頑張りたい」と決意を固めていました。
(「しんぶん赤旗」2017年9月23日より転載)