東京電力福島第1原発事故を検証していた日本原子力学会の調査委員会(委員長・田中知東京大教授)は9月2日、最終報告書案の概要を公表しました。同原発内に大量にたまり、海への流出が問題となっている放射能汚染水の成分のうち、トリチウム(3重水素)は、濃度を薄めてから海に放出することを提案しました。
トリチウムは通常の水を構成する水素の放射性同位元素で、性質が似ています。東電は汚染水に含まれる放射性物質の大半を除去できるとする多核種除去設備(アルプス)の稼働を目指していますが、トリチウムは除去できません。
原子力学会の提言どおり薄めたとしても、放出されるトリチウムの総量が同じであれば、海の生物などへ影響する恐れもあります。
事故調の報告書は東電、政府、国会、民間に続き5番目。学会員から意見を聴いて年内に正式にまとめ、政府や電力会社、原発機器メーカーなどに提出するとしています。