新潟県の花角英世知事は13日、県独自の福島第1原発事故に関する「三つの検証」の総括報告書を発表し、各報告書に「矛盾はなかった」として、今後は東京電力柏崎刈羽原発の再稼働の是非などの議論を進めると述べました。
これに対して検証総括委員会の前委員長、池内了(さとる)名古屋大学名誉教授ら元委員が同日、会見を開き、「三つの検証」は新潟県の原子力事故に関する検証を目的に設置されたもので、検証は「道半ば」であり、このままでは柏崎刈羽原発の安全性や県民の命は守れないと指摘。市民検証による独自のパンフレットを年内に刊行すると発表しました。
事故原因、健康被害と避難生活への影響、避難方法の「三つの検証」の報告書は、今年3月末までに県に提出されました。しかし県は、全体をまとめる検証総括委を池内委員長と意見の相違があるとして2年以上開かず、3月末で全7委員を再任せず、県職員が事務的に取りまとめ作業をしてきました。
花角知事は、総括報告書(86ページ)は、各報告書を要約した章と、複数の報告書に関連する課題を九つに整理し確認した章に取りまとめた結果、矛盾はないと確認できたと述べ、今後の柏崎刈羽原発に関する議論に生かしていくと話しました。
県民説明会や再稼働の是非の判断などの手法や日程は未定で、原子力規制委員会の検査などの進捗(しんちょく)を踏まえ検討すると答えました。
知事会見を受けて、池内氏や前総括委員・避難委員会副委員長の佐々木寛新潟国際情報大学教授、健康・生活委員会委員の木村真三獨協医科大学准教授がオンラインで会見を開きました。
池内氏は、県は「三つの検証」は福島原発事故に限ると押し通したが、「柏崎刈羽原発の安全性や東京電力の適格性に言及しないものでは、県民の命を守る対策は取ることができない」と指摘。「複数の事故原因が考えられるなら、どちらの原因も徹底検証することが必要だったが、両論併記で終わっている」「避難時の被ばくリスクは、避難と健康の両委員会の合同で議論が必要なものなど、横断し深掘りする課題が多く残されている」などの問題を指摘しました。
佐々木氏は「避難委は当初から、柏崎刈羽原発事故時の避難の議論をしてきた。200以上の課題が解決できなければ実効性ある避難計画はできないが、知事は向き合う姿勢がなく、県民と国のどちらを向いているのか不安を感じる会見だった」と話しました。
そして、専門家と県民が主体の市民検証委員会が県内各地で開いている対話集会でさらに議論を深めていくと話しました。
(「しんぶん赤旗」2023年9月14日より転載)