ふゆみ 東京電力福島第1原発で、倒壊が心配されている排気筒の解体がもうすぐ始まるね。
のぼる いや、それが延期になったらしいよ。
ふゆみ どうして?
のぼる 高さ120メートルの排気筒の上に解体装置を載せなきゃいけないのに、解体装置を上からつるすクレーンの高さが足りなかったって。
ふゆみ なにそれ!?
のぼる クレーンで上げても、解体装置の底の位置が排気筒の頂部より約1・6メートル下になることが、現場の確認作業で判明した。1・3メートル見込んでいた余裕と合わせて3メートルも足りなかった。
ふゆみ ずいぶんお粗末な話ね。それで、解体作業はどうなるの?
のぼる クレーンを継ぎ足して長くするか、クレーンの設置場所を近づけるか、検討中だって。
もし倒壊したら
ふゆみ それにしても排気筒への対策が打てないまま事故発生から8年以上もたってしまった。事故後4年の時点で、耐用基準を超える腐食が進む可能性があると、「しんぶん赤旗」が1面トップで報じていたね。「もし大きな地震でも起こって倒壊したら」って、みんなずっと心配してきた。
のぼる うん。とくにこの排気筒は、1号機の原子炉内の圧力を下げるために中の気体を放出する「ベント」に使われたから、放射性物質で汚染された。根元では、そこに十数分間いるだけで人の致死量に達するほどの強烈な放射線源が見つかっているからね。
ふゆみ 放射性物質が飛散することになる…。もっと早く解体作業を始められなかったのかな。
のぼる そこは難しい問題だよ。現状のまま放置できないが、その一方で、作業を急げば被ばくの危険が高くなる―。専門家は、通常の事故とは違う放射能事故のジレンマだと指摘している。
ふゆみ 確かに。通常の事故現場で、こんなに長期間、倒壊の危険が放置されることはない。
愚かさの象徴か
のぼる そう。今回の計画にしても、解体するのは上半分の60メートル。下の方は放射線が厳しくて手をつけるのは困難だ。
ふゆみ 事故収束の道のりは遠いね。
のぼる 立ち枯れる排気筒の姿は、政府や電力会社が進める原発再稼働路線がいかに愚かなのかを訴えているようだ。
(「しんぶん赤旗」2019年5月18日より転載)