「もんじゅ判決」批判の根拠示せ(文責・山本雅彦)

  党地区委と敦賀市議団 国に説明を求める(下)

しんぶん「赤旗」読者ニュースより     03/8/21発行
七月二五日、党嶺南地区委員会と敦賀市議員団が、国に「もんじゅ判決」批判の根拠を示すよう求め、要請した内容「赤旗読者ニュース・八月七日付け」(中)の続きを紹介します。
  4、炉心崩壊事故について

  ○「もんじゅ」は炉心崩壊の危険性高い 

  ○甘すぎる炉心崩壊時のエネルギー評価

  ○炉心損傷後の機械的エネルギーの評価には、欠落がある

  5、「もんじゆ」改造では安全審査の欠陥救えない

4、炉心崩壊事故について

●国→技術的には起こるとは考えられない事象であるが、安全審査に際してはこれも考慮している

●名古屋高裁→安全審査の対象としたのは、短時間で炉が暴走する場合のみで、穏やかな暴走は審査せず

 炉心崩壊に至る事故の場合、炉心で冷却材のナトリウムが減少・喪失(冷却材減少・喪失ULOF)するケースと、炉心に異常が起き、原子炉の自動停止機能が働かない過出力事故(UTOP)が考えられるといいます。

 国は、「複数ある安全装置が全て働かないという条件に基づく炉心崩壊事故は、技術的には起こるとは考えられない事象であるが、もんじゅの安全審査に際してはこれも考慮している」(三月一四日、原子力安全・保安院)といいます。

 しかし、過出力事故(UTOP)の場合、「もんじゅ」で安全審査の対象としたのは、燃料が損傷したあたりの「起因過程」で直ちに「即発臨界=爆発」となるケースだけです。

 「もんじゅ」では軽水炉とくらべて核分裂を起こすと直ちに発生する即発中性子の割合が大きく、かつその寿命が短い。つまり、世代交代の時間が早いので、一旦出力暴走を始め、「即発臨界」に至ると、もはや暴走をとめるいかなる手段もなく、瞬間的に大量のエネルギーと放射線(中性子とガンマ線)を発します。「もんじゅ」の安全審査の対象となったのは、このケースのみです。

 ところが、起因過程においては直ちに臨界に達せず、炉心における燃料溶融が進行し、炉心がプールのような状態となって、「遷移過程」において「再臨界=即発臨界=爆発」となるケースも存在すると考えられています。

福井県。もんじゅ検討委員会の資料より
※解説 国の審査では再臨界から即発臨界にいたり、爆発するケースは考えられていない
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○「もんじゅ」は炉心崩壊の危険性高い

 それでは、過出力事故(UTOP)はどのように進展するかについて、「何らかの理由で、核分裂反応が活発化すれば、出力は上昇する。それによってナトリウム温度は上昇し、ナトリウムは沸騰・蒸発する。炉心の中心においては、ナトリウム・ボイド反応度は正(本ニュース中参照)であるから、核分裂反応は更に活発化し、出力は上昇し、ますますナトリウムは沸騰するという悪循環をくり返し、暴走状態となる。その結果燃料は高温となって損傷・溶融する。」(原判決:控訴人主張)と指摘しています。

 そして燃料が損傷した後、「(燃料棒の)被覆管の内圧によって燃料がナトリウム中に噴出し、激しい燃料・冷却材相互作用を引き起こす。しかも、燃料棒間の間隔が、軽水炉(加圧水型)では約3・4ミリ離れているのに、もんじゅでは1・4ミリと狭いので、異物がくれば流路が閉塞されやすく、また燃料棒が曲ればそれだけ隣接燃料棒との接触が起きやすい。このようになれば、ますます核分裂反応は活発化することになる。単位体積からの発熱量(出力密度)は、もんじゅは軽水炉の三ないし一〇倍であるから、炉心にむりやり詰め込まれた燃料は溶けやすいといえる。」(同)。さらに冷却材減少・喪失事故(ULOF)についても、「燃料が損傷した後、同様の事故進展が考えられる」(同)と指摘します。

 これは、高速増殖炉では、出力暴走・炉心溶融から進展する「炉心崩壊事故」の危険性が高いということを示しています。


○甘すぎる炉心崩壊時のエネルギー評価                    先頭に戻る

●国→炉心崩壊による発生エネルギーについて、想定し得ない数字である

●名古屋高裁→動燃が行った九九二メガジュールとした解析は、外国の例と比べても過大ではない

 国は、「判決では、チェルノブイリ事故と比較するのは非論理的。炉心崩壊による発生エネルギーについて、合理的に想定し得ない数字をも仮定した評価を行うことを求めている。このようなあり得ない仮定にさらに非現実的な仮定を重ねるような考え方は不適切。」(七月一六日、渡辺格課長)だといいます。

 もちろん、チェルノブイリ事故と同じような炉心崩壊事故が「もんじゅ」でも起きると速断することはできません。しかし現判決は、外国における炉心崩壊事故をあげた上で、その「最も重大で深刻な事故はチェルノブイリ事故である。この事故は、原子炉の炉心が崩壊した場合の危険性と悲惨さを如実に物語っている」と述べています。

 さらに原判決は、チェルノブイリ4号炉と「もんじゅ」とは、炉型も規模も違っているが、「もんじゅ」は「研究開発段階の高速増殖炉であり、未解明な分野が少なくなく、しかも正のボイド反応度を持ち出力密度も高い炉心特性を有しており、十分な安全対策が必要である」と述べています。

 そうなると、炉心崩壊時にどのような機械的エネルギー(有効仕事量)が出るのか、それに「もんじゆ」の原子炉格納容器は耐えられるのかが、問題となってきます。

 しかし、この事故の模擬実験は到底できるものではないので、コンピュータのシュミレーションで模擬してみるより方法はありません。そのプログラムを作るには適切なデータが必要ですが、「どのようなモデルを対象にどのコードを使っていかなるパラメータのもとに解析を行うのが妥当なのかの判断、並びにパラメータを異にする複数の解析結果のうちのどの解析結果を設計上の基準として採用するのが適当なのかの判断は、決して容易なことではない」(原判決)と述べているように、これも決め手がありません。

 こうした問題で名古屋高裁は、安全委員会の裁量がよほど不合理なものでない限り、これを尊重しなければならないといいます。

 その上で現判決は、「炉心崩壊となったときに発生する機械的エネルギーについて、安全委員会は、これを三八〇メガジュールとした解析を妥当としているが、動燃が行った解析のなかには九九二メガジュールとした解析もある。これは外国の例と比べても過大ではない。なのにこれを安全審査機関に報告しなかった。これでは安全審査は充分な資料をもとに評価したことにはならない。」と指摘しました。


○炉心損傷後の機械的エネルギーの評価には、欠落がある            先頭に戻る

 また、核反応がいったん納まっても再び盛んになる「再臨界」について、「そのころ(安全審査時)は既に遷移過程の事象推移と再臨界に伴う機械的エネルギー発生の可能性の重要性は認識されていたにもかかわらず、証拠(乙9、14の3、原審証人斎藤伸三、同秋山守の各証言)を検討しても、本件安全審査において、遷移過程の事象推移などが評価された形跡は一切認められない。そうすると、原子力安全委員会は、この点の評価をしなかったと認めるほかはない。しかし、原子力安全委員会は、規制法24条1項4号の『当該申請に係る原子炉施設の位置、構造及び設備が核燃料物質、核燃料物質によって汚染された物又は原子炉による災害の防止上支障がないものであること』を審査する機関であり、炉心崩壊事故を構成する上記のような極めて重要な事象について判断を省略するなどということは、到底許されないことである。評価をする適切な解析コードがないという事情はあるにしても、そのこと故に遷移過程の事象推移などの評価をしないことが正当化されるものではない。科学的、専門技術的見地からの審査が期待されている原子力安全委員会としては、たとえ適切な解析コードがなくとも、海外の評価例やこれまで実験によって得られた知識、データなどを斟酌して、少なくとも、遷移過程において再臨界が生じた場合の機械的エネルギーの上限をどの程度まで評価しておくのが安全上妥当であるかを判断すべき責務があるというべきである。」(原判決)と指摘しています。つまり、これが重要な問題だということが当時でも分かっていたが、この点を安全審査で評価した形跡がまるでない。この点でも安全委員会はその責務を果たしていないと厳しく指摘し、「(もんじゅの)安全審査の1次冷却材流量減少時反応度抑制機能喪失事象における炉心損傷後の機械的エネルギーの評価には、欠落があるといわなければならない。」(同)と厳しく断じています。


5、「もんじゆ」改造では安全審査の欠陥救えない

 ナトリウム漏れ事故をきっかけとして、「もんじゅ」を改造する原子炉設置変更申請が出されました。現判決は結論部分で、「これは裁判所が指摘した二次ナトリウム漏れと蒸気発生器伝熱管破損事故に関するものだが、これに対しては口頭弁論終結までに被控訴人(国)の判断が出されなかった」と述べています。(その後、国はこの変更(改造)申請を許可した。)しかし、現判決はこの申請が通ったとしても、その内容は裁判所が「もんじゅ」許可を「無効」とした「反応度抑制機能喪失事象」(炉心崩壊事故)には何も触れていないから、これによって安全審査の欠陥を改めることにはならないと、はっきり指摘しています。

 国側は、もしこの裁判で負けても、それは古い「もんじゅ」が否定されるだけで、改造工事で「もんじゅ」はよみがえると考えていたようですが、現判決でそのことも否定されました。

文科省‥「必要ならあなたたちが(安全確認を)やればよい」などと暴言!

 文部科学省主催による「もんじゅ」に関する説明会が七月一六日、敦賀市のサンピア敦賀で開かれました。

 その説明会の終了後、党嶺南地区委員会副委員長の山本雅彦氏が文科省敦賀出張所の小川所長に、炉心崩壊事故についての放出エネルギー約三八〇メガジュールなどの妥当性について「動燃が行った、解析コードを公開するよう要求」しました。すると、同所長は「あなた達も必要だったら、吉井英勝先生(日本共産党衆院議員)にいってアメリカから買えばいい」などと暴言をはきました。

 「もんじゅ」の安全について、住民の生命・財産を守る立場から、積極的に情報を開示し、説明責任を果たすべき文科省(「もんじゅ」の地元、敦賀の所長)が、「必要ならあなたたちが(安全確認を)やればよい」などと暴言をはくなど、まったく驚くべきことです。


用語解説

「即発臨界」=中性子数がわずかに増加しただけで出力が極めて短時間に急激に増大すること。即発中性子だけで臨界になるような状態になると,つまり,生まれる中性子数が失われる中性子数を超える程度(反応度)が遅発中性子の割合分を超えてしまうと,遅発中性子はもはや原子炉の時間的挙動に影響を与えることはなくなり,原子炉の挙動は即発中性子だけに支配される。その結果短時間で急激な出力増大,すなわち,制御できない暴走状態に陥る危険が生じてくる。このように即発中性子だけで臨界になる状態を「即発臨界」という。

「起因過程」=一気に即発臨界に到らず、炉心溶融が徐々に進行し、燃料棒同士が溶融合体して次の遷移過程に移行する道筋。

「遷移過程」=起因過程が比較的穏やかに進行した場合,その後にたどる中間的な過程をいう。

「再臨界」=核分裂反応がいったん納まっても再び盛んになること。                        先頭に戻る