「もんじゅ判決」批判の根拠示せ(文責・山本雅彦)

    党地区委と 敦賀市議団 国に説明を求める  (上)

しんぶん「赤旗」読者ニュースより  03/7/31発行
 日本共産党嶺南地区委員会と敦賀市議団は七月二五日、今年一月の名古屋高裁金沢支部の「もんじゅ判決」(原判決)を国が批判していることについて、国会内で文部科学省と経済産業省の担当者に面会し、その見解をただしました。これには木島日出夫衆院議員が同席。山本雅彦副委員長と上原修一、山本貴美子両市議が出席しました。

 判決は、安全審査に誤りがあるなどとして、国の高速増殖炉「もんじゅ」設置許可処分を無効としました。判決後初めて一般住民を対象とした「もんじゅ」説明会が七月十六日、敦賀市で開かれ、席上、両省は、ナトリウム漏れ対策などについて「判決の議論は非論理的、非科学的」と批判しました。

 九五年のナトリウム漏れ火災事故で起こった、ナトリウムとステンレスとの間で起こる「溶融塩反応」について、国が事故後の新知見だとしていることにたいし、安全審査当時、こうした反応が起こることが本当に知られていなかったかと追及。

 経産省の担当者は、「世の中にそうした知見はあったかもしれないが、審査委員に知れ渡るほど広く知られてはいなかった」と述べ、すでにそうした知見があったことを認めました。 

 また、炉心崩壊に至る冷却材減少・喪失事故が起こったとき、どれぐらいの熱エネルギーが放出されるかを計算した解析プログラムを開示するよう求めたのにたいし、経産省の担当者は核燃料サイクル開発機構に可能かどうか問い合わせることを約束しました。

 上原、山本両市議は、「国は何かというとありえないというが、原発と隣り合わせに暮らしている住民の気持ちがまったくわかっていない。ありとあらゆることを想定して危険を防ぐようにすべきだ」と強調しました。

 以下に問題点をただした内容を紹介します。

1,「もんじゅ」の「原子炉設置許可処分を無効とする要件について」

2,床ライナ(2次ナトリウム漏えい事故対策)について

(1)安全審査で、「溶融塩型腐食損傷」の知識を欠いたまま審議が行われ、「2次ナトリウム漏えい事故対策」は安全であるとの誤った判断がなされた

(2)「安全審査の妥当性を左右するものではない」という国の主張の誤り


1,「もんじゅ」の「原子炉設置許可処分を無効とする要件について」

 ●国→重大かつ明白な違法性が必要とした過去の最高裁判例を逸脱

 ●高裁判決→違法(瑕疵)の重大性をもって足り、明白性は不要

 国は、「違法な行政処分を無効とするためには、重大かつ明白な違法性が必要とした過去の最高裁判例を逸脱」(七月十六日、渡辺格課長)している、「もんじゅ」の「原子炉設置許可処分の後、原子炉の建設段階で、(建設資金を投資することにより)第三者(工事関係者)との利害的な関係が発生するので、おいそれと(設置許可を)無効にできない。最高裁判例でも、第三者との関係が生じてしまう場合『重大かつ明白な違法性が必要』としている」(七月二五日、池田英貴課長補佐)といいます。

 しかし、高裁判決(原判決)は、「もんじゅ」など原子炉には「潜在的危険性」があり、その重大性に「特段の事情がある」として、「許可処分についての無効要件は、違法(瑕疵)の重大性をもって足り、明白性の要件は不要と解するのが相当である」と述べています。

 さらに「最高裁・伊方判決(平成四年十月二九日)」は、「もんじゅ」裁判での裁判所の審理、判断は、「現在の科学技術水準に照らして行うべき」だと判示しています。これによると、「処分当時の知見による安全審査に問題はなくとも、その後の科学技術の進展によって新しい知見が得られ、この新知見によって判断すれば、処分の前提となる安全審査に看過し難い過誤、欠落のあることが判明した場合には、当該処分は違法と判断されることとなる」(原判決)としています。

 そして、「最高裁・第三小法廷・昭和三六年三月七日判決」は、「瑕疵が明白というのは、処分成立の当初から誤認であることが外形上、客観的に明白であることを指すものと解すべきである。」と判示しており、許可処分後の新知見に基づく処分の無効確認については、「違法(瑕疵)の明白性を求めることは、事実上、提訴の断念を強いるに等しいことである」(原判決)と述べています。

 よってこの場合、違法な行政処分を無効とするために「重大かつ明白な違法性が必要」とすることは極めて不当であり、「不要と解さなければ、国民の権利救済の途を閉ざすことになる」(原判決)と指摘しています。

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2,床ライナ(2次ナトリウム漏えい事故対策)について

 ●国→床ライナの健全性に問題が生じることはないので、安全審査の妥当性を左右しない

 ●高裁判決→ナトリウム漏えい事故において、床ライナの温度がどうなるかは設置許可段階の安全審査の対象となるべき重大な事項

 国は、「床ライナの厚さは、配管の厚さ等と同様に、詳細設計段階で検討すべき事項というのが確立した法律の考え方であり、詳細設計を審査する『設計及び工事方法認可』において適切に審査している。

 基本設計を審査する設置許可に際しては、安全上必要な設備として床ライナを設置することを確認しており、問題はない。(ナトリウムが漏れて)少々温度があがったとしても床ライナーの健全性に問題が生じることはなく、そもそも安全審査の妥当性を左右するものではない。さらに、床ライナの厚さは、設置許可の安全審査の対象ではない」(渡辺格課長)といいます。

 しかし、「最高裁・伊方判決」が示した違法判断の基準(※注1を参照)は、まず国の方で、原子炉設置許可処分の基礎となった原子力安全委員会の安全審査の審議過程に現在の科学水準に照らして「見逃すことのできない誤り」がないことを相当の根拠資料に基づいて証明する必要があり、国がそれを尽くさない場合には、国の判断に不合理な点があることが推定され、その結果原子炉設置許可処分は違法となるというものです。

 この基準によれば、「もんじゅ」の「2次ナトリウム漏えい事故対策」の安全審査は破綻しており、原子炉設置許可処分の違法判断は明確です。


(1)安全審査で、「溶融塩型腐食損傷」の知識を欠いたまま審議が行われ、「2次ナトリウム漏えい事故対策」は安全であるとの誤った判断がなされた

 「床ライナーの健全性の問題」では、冷却材のナトリウムが漏れて、2次冷却系建屋の床コンクリートの水分と接触すると、爆発的に反応して床コンクリートは水分を奪われてボロボロになり、2次冷却系建屋は爆発の圧力で破壊され、原子炉は冷却機能を損なうおそれがあることから、漏えいナトリウムと床コンクリートの接触を防止するために、床上にライナと呼ばれる鉄製の板を張ることを基本設計としました。

 その基本設計で、鉄は融点が1400℃であるとしました。しかし、それ以下の温度でも、高温下でナトリウムと鉄が接触すると「溶融塩型腐食損傷」と呼ばれる急激な腐食を受けるため、ライナには穴が開き、ナトリウムは床コンクリートと接触することになります。さらに、「床ライナの膨張率を左右する床ライナの温度は、極めて重要な審査事項であり、被控訴人(国)が主張するような『念のために確認した』程度で済まされるものではない。

 したがって、2次冷却材漏えい事故において、床ライナの最高温度が何度であるのかは、原子炉設置許可の段階の安全審査の対象となるべき事項といわなければならない。」(原判決)と述べています。よって、「もんじゅ」に対する「2次ナトリウム漏えい事故対策」は破綻していることは明らかです。

 ところが、「もんじゅ」の安全審査では、この「溶融塩型腐食損傷」の知識を欠いたまま審議が行われ、その結果、床ライナ上にナトリウムが落下したときの温度は鉄の融点以下に納まるから、「2次ナトリウム漏えい事故対策」は安全であるとの誤った判断がなされました。


2)「安全審査の妥当性を左右するものではない」という国の主張の誤り

 「安全審査の妥当性を左右するものではない」という国の主張について、「ナトリウム燃焼新解析は、ナトリウムの漏えい継続時間を最大で八二分として解析したものであり、一時間当たりの漏えい率が一トンを超えれば、その継続時間は更に短くなっているのであって(甲イ357)、このような解析条件には基本的に疑問のあるところである。したがって、かかる解析条件のもとに算出された床ライナの最高温度約620℃を基準に、床ライナと建物が干渉する危険性がないと断定することは相当ではない。」(原判決)と述べ、結びで「設計基準事故である『2次冷却材漏えい事故』の評価に関する本件安全審査の過誤、欠落が『看過し難い』ほどに重大ではないという被控訴人(国)の主張は、採用することができない。」(原判決)と断じています。これが「最高裁・伊方判決」のいう「審議過程における見逃すことのできない誤り」であることは明らかであり、「もんじゅ」に対する原子炉設置許可処分は違法であることも明らかです。

(下)につづく

ナトリウム漏えい火災直後の配管室 1995/12
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(※注1)「原子炉設置許可処分についての右取消訴訟においては、右処分が前記のような性質を有することにかんがみると、被告行政庁(国)がした右判断に不合理な点があることの主張、立証責任は、本来、原告が負うべきものと解されるが、当該原子炉施設の安全審査に関する資料をすべて被告行政庁の側が保持していることなどの点を考慮すると、被告行政庁の側において、まず、その依拠した前記の具体的審査基準並びに調査審議及び判断の過程等、被告行政庁の判断に不合理な点のないことを相当の根拠、資料に基づき主張、立証する必要があり、被告行政庁が右主張、立証を尽くさない場合には、被告行政庁がした右判断に不合理な点があることが事実上推認されるものというべきである。」(最高裁・伊方原発訴訟上告審判決、平成四年十月二九日)